分解
分解(と)け出す自分のカラダに
思わずオレは呟いた
『キレイだ…』
やがて、目の前は限りなく
蝶に近い蛾で
いっぱいになった。
『逝カナイデ……!!!』
嗚呼、誰かの声がする。
良く聞き慣れた、声。
酷く必死な、どうしようもなく、愛しい声だ。
『逝カナイデ…!!』
痛いほどの涙声がオレの脳に響く。
目の前に広がる奇妙に美しい物体達を掻き分けて必死にオレを探す手。
視界に写ったり消えたりするそれを見ながらオレは考える。
これは、誰だ?
コンナにも美しく
散っていく事が出来ているオレを
引き止めるこの声は
誰のものだった…?
『D!!!!』
名前を呼ぶ声と、
分解してなくなりつつあったオレのカラダを抱きしめる力、
キレイな顔を涙で濡らし、
必死に逝かせまいとする。
涙で滲み切った赤と黒に近い灰色がオレを捕らえる。
スマイル……
「D…!!死んじゃ、ヤダ…!!僕を独りにしナイデッ!!!!」
もう存在しない筈の腕を動かして、
如何にかスマイルを抱きしめようとする。
嗚呼…こんなに、生きてる奴は暖かかったか?
オレが冷えてるのか、それとも、スマイルが暖かすぎるのか
そんなことはどうでもいいけれど。
「逝かナイデ…!」
先刻から、響いていた言葉
愛しい
言葉
オレは精一杯の笑みを浮かべてスマイルを力一杯抱きしめた
「何処にも、逝かねーよ」
それを言葉にした途端、
オレのカラダは分解を止め。
視界を占めていた沢山の蛾は又オレの中へと帰っていった。
オレは又、カタチを取り戻した。
一体、この現象がなんだったのか、
ただの消滅願望が生み出した夢だったのかも、
オレには解らない。
ただ、今俺が言えるのは
未だ生きてると言うこと。
愛しい、スマイルと共に……
END
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今回のは、日記のほうでもお馴染みのDさん遣いの我火尽が
僕のお家に泊まりに来た時に残していったこの背景画が元になっています。
学校の文化祭に出す文章がどうしても思いつかなくて、どうしようどうしようって
煮詰まってたらこんな形で文章になりました。
それは、まぁ、置いといて…
とりあえず、微妙な物であることには変わりないわけで。
相変わらず、Dという人物の喋り方やらなんやらがわかりません。
後鬼さんには珍しくハピエンド。
メルマガで8月17日に配信しました。